幸せのつかみ方
   ***

樹さんとLINEや電話で話す日が多くなった。

話す時間が増えれば、その分お互いの好きなものを知る。
共通の話題も増えていく。
会話もどんどん弾んでいく。

私の中の樹さんへの好意が増えていく。
止めたはずの「好き」が増えていく。


樹さんの口から恋愛がらみの言葉は出てこない。
友人の延長のような関係。
けれど、樹さんからの好意は伝わってくる。


もし、私が樹さんと付き合うことになったら、どうなるのだろう。

きっと私は樹さんの気持ちが代わるのが恐いと思うだろう。
そして信じて裏切られる。そんなことを恐いと思ってしまうはず。


樹さんと裕太は違う。
そんなことは分かっているけれど、やはり恐い。



好きにならなければ苦しい思いも嫉妬もしない。
隣にいなければ、離れていく辛さを味わうこともない。

自分が逃げていることは分かる。


そして、私が樹さんに好きだと言ってもらえるような人間じゃないことも分かっている。



私が樹さんの傍にいちゃいけない。

何も言わない樹さんの好意にこれ以上甘えちゃいけない。
このままの関係でいたいと思うのはずるい。



きちんと樹さんに言わなくてはいけない。
今日で最後にしなくてはいけない。




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