変態御曹司の飼い猫はわたしです
「タマちゃん今日のプレゼントはこれだよー」
猫撫で声で帰宅したのは私の飼い主。ここに暮らし始めて二週間が過ぎたが、困ったことに、私の猫扱いはまだ続いていた。
一ノ瀬さんが、毎晩お土産を買ってきてくれるのだ。
猫じゃらしのようなペットグッズの時もあれば、高級ショコラや有名パティスリーのケーキだったり、人間用(だと思われる)チョーカーを持ち帰ってきたこともある。
アクセサリーや猫グッズは辞退して、食べ物だけは受け取っていたところ、一ノ瀬さんは私好みのスイーツを持ち帰るようになってしまった。
会社の権力を駆使しているのか、フランスから直輸入したチョコレート菓子や有名店のビスケットなど、なかなかお目にかかれない美味しそうなスイーツばかり持ち帰る。高級デパートのデパ地下みたいなキラキラしたラインナップに、ついついときめいてしまうのだ。完全なる餌付けである。
毎日外出もせず家事だけをこなしている日々の中で、夜にいただくお菓子は危険だ。そろそろご遠慮したいのに、嬉しそうに差し出してくる笑顔が素敵だし、何より美味しそうなスイーツばかりで断りきれずにいる。
「い、一ノ瀬さん! 私多分このままだと太っちゃいます!」
「大丈夫大丈夫。どんなタマちゃんでも僕は飼い続けよう」
「もう! なんですかそれ!」
「ほらほら、美味しいよー。今日のスイーツは銀座のシャインマスカット大福! ほらほらあーん」
口元に差し出される一口大の大福。秋になり、美味しい食べ物が世の中に溢れているのがいけないんだ!
顔に近づけられたことで香ってくるシャインマスカットの素敵な匂いにときめいて、思わず口を開けてしまった。
すかさず一ノ瀬さんは私の口に大福を入れた。美味しい〜!
「タマちゃんの美味しそうに食べる顔が好きなんだ。その顔が見れて嬉しい」
慈しむような微笑みに戸惑う。だがそれは一瞬で、「あーん」を覚えた私の飼い主は、延々と餌付けしたがって大変だった。