変態御曹司の飼い猫はわたしです
「お金……沢山使っていただくの、申し訳ないです……。きっと熱も下がるだろうし、今日のアイスでもう十分ですから、お土産はこれで最後にしてください」
「うーんタマちゃんが美味しそうに食べる顔が好きなだけなんだけどなぁ」
「太っちゃう」
「いいのに」
「ダメです!」
「誕生日プレゼントだと思って?」
「毎日誕生日になるじゃないですか!」
「タマちゃんの今まで生きてきた年齢分ってことにしたらどう?」
「もう!」
偶然にも、もうすぐ私の誕生日だが、それにしても多すぎる。これ以上、一ノ瀬さんにお金を使わせるわけにはいかない。
「他にして欲しいことはない?」
「ぎゅって、してくれますか?」
一ノ瀬さんが息を飲むのを感じた。
曾根課長に会ったあの日。気が動転していた私は、一ノ瀬さんが抱きしめてくれたのに、押し返してしまった。それがずっと気にかかっている。
一ノ瀬さんが「いいの?」と確認してくれたので、私は深く頷いた。
彼は私の手を引き、優しく私の背中に手を回す。厚い胸板、心地よい鼓動、温もり。恐怖は感じなかった。
熱のせいで人肌恋しいのもあったし、あの日突き返したのは、きっと私の本心とは違ったのだと確認したかったのもある。
(あぁ、気づいてしまった)
曾根課長のことがあって、恋愛なんてもう一生できないと思っていたのに。
私、多分一ノ瀬さんのことが、好きだ。
彼の腕の中で自覚した。してしまった。私は彼の飼い猫だというのに。恋人になんてなれるはずないのに。
悲しい恋が始まる予感がした。