太陽の王子様と月の御令嬢〜禁断の恋は焦ったい?〜
*
クラクラとする頭を押さえながらトイレに辿り着いた。
ゼィゼィと肩を上下させながら着替える為に、一番端っこの個室へと入る。
眼鏡とマスクを外してからホッと息を吐き出す。
(はぁ……暗い場所は落ち着く)
ヨタヨタとトイレで体操服に着替えてから、眼鏡とマスクに手を伸ばした時だった。
ーーーバッシャーン
再び上から降ってきた水。
冷静になって考えていた。
(よっぽど暇なのかな……マスクと眼鏡が無事で良かった)
クスクスという笑い声と、パタパタと去っていく数人の足音。
(んー……仕方ない。着替えがないから帰ろう)
こうして追いかけて来てまで、わざわざ嫌がらせをする事の何が楽しいのか。
この行為に何の意味があるのか分からないが、貴族社会においてのストレスをぶつけるには、何も言わない自分は恰好の的なのだろう。
ちまちまと飛ぶハエのように鬱陶しいことこの上ない。
此方に構うよりも時間を有効に使えばいいのにと思わずには居られなかった。
再びびしょ濡れになったジャージを絞り、そして制服を絞れるだけ絞り、トイレを綺麗に掃除してから荷物を持ちに行く為に教室へと向かった。
「うわー!皆で使う教室を濡らすなよ」
「まぁ、なんて汚いの!!」
「……信じられない!教室が臭くなるでしょう!?」
教室に入るとクスクスと笑う声と、嫌悪感を示す態度。
冷めた視線が教室中から突き刺さる。