保健室の死神くん




「な……え……?」


カーテンをくぐり


「わ」


あっという間に、ベッドに座らされる。



「……あの」

「聞かせてよ」



え?


「さっきの話」


……さっき?



「死神について」

「……えっと」



こてんと横たわると、こっちを見上げる先輩。



……自由気ままな猫ですか。



「あまり大きな声では、言えないんすけど」



もしも本人がどこかでこっそり聞いていたら怖いし。



「この学校を裏で牛耳っていて」

「へえ」

「なにをしても許され」

「なにをしても?」

「校長先生も死神を恐れているらしく」

「そうなんだ」

「会ったが最後。魂を奪われるんだそうです」



先輩が、話を聞いている途中で、まぶたを閉じる。



眠いのかな。


このまま午後からの授業サボるつもりだろうか。


テスト前の受験生にしては余裕だな。



というか、寝たの?



なんてマイペースな人。





髪、さらさら。

まつ毛……なが!



アイドルみたい。



「信じてるの?」



あ、起きてた。



「……どうでしょう」



この学校にわたしより長くいる先輩が知らないなら、存在しないかもしれない。



「リノちゃんは勘違いをしている」

「勘違い、ですか」

「うん」



先輩がまぶたを閉じたまま話を続ける。



「この部屋に自由に出入りしてる生徒なら、たしかにいる」

「え?」



先輩、やっぱり心当たりあるんですか。

じゃあ死神は実在する――



「でもね。そいつは他人に一切の興味がない」

「……?」



先輩が、まぶたを開き

目が合う。



「わりと平和主義」


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