太陽の寵愛
ドクドクと心臓が嫌な音を立て、アマテラスに取られている手の指先が少しずつ冷えていく。やはり、ここにいてはいけなかったのだ。

「今日の夜、この城の外に出てきた鳥居をくぐれば人間は簡単に人間界に戻れる」

「人間の子たち、かわいそうだよね。神に捕まって、逃げる方法すらわからないままなんだから」

スサノオをツクヨミの言葉を聞きながら、一は今夜このお城を抜け出さなくてはと決意と覚悟を決め、グッと唇を噛み締めた。



夜、夕食とお風呂を済ませてしばらくすればいつものように就寝の時間が訪れる。一が布団に入り込むと、部屋にいたアマテラスが幼い子どもをあやすようにそっと頭を撫でる。

「……おやすみ、一」

「おやすみなさい、アマテラス様」

一はなるべく普段通りを装い、アマテラスに笑いかける。アマテラスは満足げに笑い、襖を閉めて出て行く。その足音が遠ざかるのを聞きながら、一は緊張しながら布団から出る。襖に近付いて行くと、自分の足音がやけに大きく感じる。
< 12 / 17 >

この作品をシェア

pagetop