太陽の寵愛
恐る恐る襖を開けると、暗闇に包まれた長い廊下が広がる。誰も廊下を歩いている人はおらず、辺りは当然ながら静まり返っており、まるで別世界に迷い込んでしまったように思えてしまう。

一が緊張しながら廊下に一歩足を踏み出すと、ギシッと廊下が軋んだ音を立て、誰か来てしまうのではないかとビクビクしてしまう。

慎重に廊下を進んでいく。不思議なことに誰ともすれ違ったり、見つかったりすることはなかった。一は首を傾げながら歩く。

(おかしいな……。夜なら侵入者がやって来ないか見張りをしている人がいるはずなんだけど、今日はその人たちの声すら聞こえない)

だが、誰もいないのは一にとって好都合である。軋む廊下を歩き、何度かアマテラスと散歩をしたことがある庭に出た。夜風が一の頰を撫で、庭に植えられた木々がザワザワと音を立てる。

「えっと……門は……」

初めてここに来た時の記憶を頼りに門へと向かう。広い庭を通り抜け、目の前に見えた門はそれは大きく、もしも閉められていたのなら一人の人間の力では開けることができなかっただろう。
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