太陽の寵愛
(お土産を買っていってあげたいけど、手持ちに余裕がないな。早く村へ帰って畑仕事をしよう)

村までは歩いて十日以上かかる。山道では山賊などが出るため気を付けなければならない。そんなことを考えながら一が宇治橋へと向かっていると、突然強い風が吹いた。

「ッ!」

一は思わず目を閉じる。すると、ふわりと誰かに抱き上げられるような感覚がした刹那、足が地面から離れたような気がした。目を開けた一は、目の前の光景に言葉を失ってしまう。

「初めまして、坊や」

目の前に美しい背の高い女性がいた。地面に着きそうな程の長い金髪は光り輝き、耳元で勾玉のついた耳飾りが揺れ、金色の豪華な装飾が施された美しい十二単を着ている。

美しい女性と出会ったーーーそれだけならばごく普通の出来事かもしれない。だが、一は何も言えずに口をパクパクと金魚のように動かすことしかできない。何故ならーーー今自分の体は目の前の女性に抱き上げられ、伊勢の空を飛んでいるためである。
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