太陽の寵愛
とある建物の屋根にアマテラスは一を下ろす。だが、彼女の手はそっと一の頰を包んでいた。そのため距離を離れることはできず、アマテラスの目を逸らすことはできない。

「アマテラス様?」

「坊やは真剣に願い事を私にしていた。自分の願い事だけじゃなく、他の人たちの願い事まで……。お前は優しい子だね」

アマテラスに頭を撫でられ、一の頬だけでなく顔全体が赤く染まっていく。畑仕事が終わった後に母が頭を撫でてくれるが、その手とは全く違うものだ。鼓動が大きくなっていく。

「……や、優しくなんかないです。村から代表者として選ばれたから、しっかりその役目を果たしたいと思っただけで……」

「いいや、坊やは優しい。旅人の中には自分の願い事だけを伝える人間もいるものさ」

だから、私は坊やが伝えてくれた願い事を叶えよう。そうアマテラスが言った刹那、一は驚いてしまう。口をまた金魚のようにパクパクとさせる一にアマテラスは笑いかける。
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