太陽の寵愛
「ハァ……」

まるでどこかの大名のような立派な着物を着せられた一は、その景色を見つめてため息を吐く。このお城に連れて来られてから、すでに半年が経とうとしていた。

このお城に足を踏み入れてすぐ、一は古びてくたびれた着物から豪華な着物へと着替えさせられ、綺麗でだだっ広い部屋を与えられた。そして見たことのないご馳走が並んだ食事が運ばれ、温かいお風呂に案内され、上質な布団で眠るーーーそんな日々が「当たり前」のようにこのお城ではこの半年続いている。

(さすがにそろそろ村に帰った方がいいんじゃ……)

いつまでも村に帰らなければ、みんなが心配するだろう。弟たちに負担をかけてしまい、母の病気がどうなったのかも気になってくる。そのため、何度か一はアマテラスに「帰りたい」という意志を伝えてきた。だがーーー。

「実は、村人たちの願い事が多くてまだ叶えられていない願い事もあるんだ。全て叶えられるまで、少し待っていてほしい。……さて。今日の仕事は終わったから、ウズメを呼んで舞でも見よう」
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