ハイスペ・栄枝社長は妻を囲いたい
「姉様?」
「え?あ、何?」

「帰りますか?」
「え?どうして?」
「姉様は、楽しくないですよね?」

「ううん!皆さんのお話聞いてるの、楽しいよ!」
「本当ですか?
無理はしないでくださいね!」

「うん、ありがとう!
それより、これ!美味しいね!」
「フフ…姉様、トマト好きですもんね!」
「うん!
あ、でも!聖守がこの前作ってくれたトマトのマリネ、とっても美味しかったぁ!
また、食べたいな!」

「また、いつでも作りますよ!」
微笑み言った妃波に、聖守も微笑み返し頭を撫でた。

「社長~!」
そこに塚元が割って入ってきて、聖守の腕に絡みついた。
酔っているようで、すり寄ってくる。

聖守は、さりげなくその手を離しながら塚元に言った。
「ごめんね、離れてくれる?」
「えーー!いいじゃないですかぁー」

「良くないよ」

「えーー!奥さんが嫉妬するとかですかぁ?」

「ううん。
“僕が”嫌なの」
「え?」

「僕はね。
妃波以外の女性には、興味ない。
その証拠に、見る?」
すると聖守は、ジャケットを脱ぎ腕を捲った。

「ほら!見て?
鳥肌!立ってるでしょ?
こんなことする為に僕を呼んだのなら、僕達帰るよ」

「塚元さん!もう、やめなって!
こっち来な!」
社員の一人が、塚元を聖守から離す。
そして、代わりに聖守に謝る。
「社長、すみません。
奥様も、すみませんでした」

「ううん!」
微笑み言った聖守。
「いえ!
大丈夫ですよ!」
妃波も微笑むのだった。


飲み会もお開きになり、聖守が伝票を取る。
「姉様。
僕、お金払ってきます!
ここで待っててくださいね!」
「うん、わかった!」

「社長!お金!受け取ってくださいってば!」
「いいって!」
社員達が聖守を追いかけて行く。

「奥さん」
「はい」
聖守がレジに行き、塚元が妃波に声をかけてきた。

「奥さんの方が、年上なんですよね?」
「え?はい、そうです」

「見えなーい!」
「ハハハ…ですよね(笑)」

「恥ずかしくないんですか?」
「え?」

「だってぇ~奥さん、頼りなさそうだし。
社長の隣にいて、恥ずかしくないのかなって」
「………」

「ちょっ…塚元さん、マジでやめなって!」

「だってぇ~」

「姉様!
お待た━━━━━」
「恥ずかしくありません!」
聖守が戻ると、それに重なるように妃波の言葉が響いた。

「え……」
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