ハイスペ・栄枝社長は妻を囲いたい
朝食を済ませ、準備をして仕事に出る二人。

指を絡めて繋ぎ、寄り添うように歩く。
「なんか、やだな…」
聖守が呟く。

「ん?」
「姉様と結婚したら、毎日幸せになれると思ってたんです。
…………あ!勘違いしないでくださいね。
毎日幸せですよ?
でも仕事に向かうこの時が、大嫌いです」

「………」
「姉様と離れたくないです」

「そうだね。寂しいね……」

そして、駅で別れる。
「じゃあ、姉様。
気をつけてくださいね!」
「うん。聖守もね!」

「はい!
姉様。職場に着いたら、メッセージくださいね!」
「うん。わかった!」

「帰りも、僕が迎えに行くまで待っててくださいね!
勝手に帰っちゃダメですよ?」
「うん」

聖守は電車に乗り、妃波は駅近くのデザイン会社に向かう。
改札から聖守が見えなくなるまで見つめて。

聖守が乗ったであろう電車が去っていき、切なそうに瞳を揺らし“よし!”と気合いを入れ職場に向かった。


そして聖守も電車に乗り、あいている席に座った。
結婚前までは車で通勤していたのだが、妃波と結婚し電車通勤をしている。
妃波の職場が、駅近くだからだ。

足を組み、ボーッとスマホ画面を見つめていた。
妃波からの連絡を待つ。
黒い画面を見つめていると、パッと画面が光り妃波からメッセージが入った。

『今、着いたよ!
聖守も、気をつけてね!
また、お昼休みに連絡するね!』
メッセージを見るだけで、顔がにやける。
返信し、駅に着くまでメッセージを見つめていた。

会社に着くと、秘書の塚元(つかもと)が駆け寄ってくる。
「社長!おはようございます!」
「おはよう!」
微笑み言う聖守に、塚元も微笑んだ。

「社長、今日の予定です。
それと、これ……」
「ん?サンドイッチ?」

「はい!ここのボリュームがあって美味しいんですよ~」
「ありがとう!」
「あの…だから、一緒に……」

「あ、ごめんね!
それは、無理だよ」
「………ですよね」

「うん。ごめんね。
一緒に食べるつもりだったのなら、せっかくだけど返すね。
気持ちだけいただくよ!ありがとう」
笑顔で口調は優しいが、淡々と即答する聖守。
塚元は肩を落とし、社長室を出た。

「また振られたの?」
秘書課の先輩が、塚元に声をかける。

「はい…」
返されたサンドイッチを見つめながら頷く。

「貴女も、いい加減こりたら?
100パー無理よ!
社長、奥さんにベタ惚れだから!
貴女は今年入社したから知らないだろうけど、飲み会には必ず奥さん連れてくるのよ?
ランチも、一緒できる時は必ず一緒してるみたいだし!
とにかく、結婚前から凄かったんだから!」

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