ハイスペ・栄枝社長は妻を囲いたい
「林部さ━━━━あ、違う!栄枝さーん!」
「あ、はい!」

「今日、一緒にランチどう?」

一方の妃波。
会社の同僚に、声をかけられていた。

「あ…えーと……」

今日は、聖守と一緒にランチする予定だ。

「ん?先約あるの?」
「あ、はい。
すみません!」

「そっかぁー!
あ、旦那さん?」

「え?は、はい」
「そっか!じゃあ、ダメだね!」
「せっかくお誘い頂いたのに、すみません!」
ペコッと頭を下げる妃波。

「……………ちょっと、相談したいことがあったんだけどな…」
「え……」

「あ、気にしないでね!また、今度で!」
「だったら、ちょっと待っててもらえますか?」

妃波は、聖守にメッセージを送った。
【今日のランチ、別々にさせてくれないかな?】
すると、すぐに電話がかかってきた。

『姉様!!』
「もしもし?」

『どうしてですか!?姉様と昼に会えるの楽しみにしてたのに!』
「同僚の矢畑(やはた)さんの相談にのってあげたいの」
『相談?』
「うん。思い詰めてるようだったから、力になりたい」
『………』
「……聖守?」

『わかりました。でも!仕事終わった後はダメですからね!』
「うん。ありがとう、聖守」

『いえ。姉様の気持ち、大切にしたいので』
「うん」

『…………でも、姉様』
「ん?」

『今日の夜は、僕の好きにさせてくださいね?』

「え?う、うん。わかった」


「━━━━━━栄枝さん、ごめんね。
ランチ、キャンセルさせて」
「いえいえ!矢畑さん、何かお悩みですか?」

駅ビル内のピザ店に向かい、ランチをしている妃波。
「栄枝さん“束縛”ってどう思う?」

「え?
束縛、ですか?」
「うん」

「どう、とは……?」
「栄枝さんの旦那さん、束縛凄いでしょ?」

「そうかな?
私は、そんな風には思いませんが……
どちらかって言うと、私の方が依存気味なんです……(笑)」
「そっか」

「ん?彼氏さんが、束縛してくるとかですか?」
「そうなの…
私は、そうゆうの息がつまるから。
これ、見てくれる?」
矢畑が、スマホ画面を見せてくる。

【みっちゃん、好き!】
【今何してるの?】
【今日も会おうね!】
【いつものところで待ってるからね!】
【みっちゃん、返事は?】
【まさか、浮気してないよね?】
【今、昼休みの時間だよね?
だったら、返事出きるよね?】
【返事ちょうだい!!】

そこには、分刻みでメッセージが入っていた。

「凄いですね……」
正直、妃波も退いていた。

聖守と妃波は、こんなメッセージの送り方はしたことない。
確かに二人は結婚前から、お互いの予定はアプリで共有し、聖守は妃波のことを常にGPSで確認している。
異性との関わりも、仕事以外は極力しないようにし、常に一緒にいた。

電話は毎日していたが、メッセージはこんな風には送ったことがない。

確かに電話を毎日したり、常にGPSで確認するのもかなりのことだが、なぜか“メッセージ”として見ると、凄い圧迫感を感じる。
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