切なさが加速する前に
カシャ
とグラスの中で氷が響いた。
あたし達はi(アイ)の過去から現実に戻って来た。
♪ The way we were・・・
「名刺を渡した翌日にメールが来たの。ホントは昼間からお客とは会わないの、店に呼んでナンボだからさ。私達の世界は」
「だけど、会ってしまったのは、彼に何かを感じたのかい?」
「寂しさかなあ、彼も居場所がない。そんな風に感じたの。ねぇママ。このバーボン・ソーダはいくら飲んでも丁度いい。酔いに合わせて調節してくれているの?」
「美味しいならよかった」
「あの頃、私、この街に少し住みたいと思い始めていた。友達の家に居候していることを私、彼に話してしまったの。私、あの時、何かを期待したのかなあ?」
「どうかな?純粋にi(アイ)は相談しただけだと思うよ。彼が部屋を借りてくれると言ったら、i(アイ)はそれを受け入れたと思うかい?」
「そんな負担を彼には掛けさせないよ、多分。どうだろう?ママ。私、分からない」
「実際はどうだったんだい?」
「スナックのオーナーはだいたい緊急用に部屋の一つはキープしているものだからって掛けあってくれたの」
「なるほど」
「店があるビルの上に女の子の着替え用に部屋が借りてあって昼間は空いているから暫く使っていいという事になったの」
「それは良かったね。でも着替えに皆が来るってことだね」
「寝泊まり出来れば十分。でも聞いてくれてありがたかった。ガス、電気、水道、冷暖房完備だし。夜、皆が着替えに入るけど夜は私も仕事だし。何よりお金が掛からなかったから。一人でいる時間が出来たこと、一人でいる場所が出来たことが嬉しかったよ」
「時には、孤独な時間は必要なものだからね」
「ママは何でもお見通しだね。彼には店に週に一度くらいで顔を出してもらったけど、私達、毎日会う様になった。一時間でも、三〇分でもいいから何か理由を付けて会おうとしていた。昼間だったり、私が仕事を上がる深夜だったり・・・」
とグラスの中で氷が響いた。
あたし達はi(アイ)の過去から現実に戻って来た。
♪ The way we were・・・
「名刺を渡した翌日にメールが来たの。ホントは昼間からお客とは会わないの、店に呼んでナンボだからさ。私達の世界は」
「だけど、会ってしまったのは、彼に何かを感じたのかい?」
「寂しさかなあ、彼も居場所がない。そんな風に感じたの。ねぇママ。このバーボン・ソーダはいくら飲んでも丁度いい。酔いに合わせて調節してくれているの?」
「美味しいならよかった」
「あの頃、私、この街に少し住みたいと思い始めていた。友達の家に居候していることを私、彼に話してしまったの。私、あの時、何かを期待したのかなあ?」
「どうかな?純粋にi(アイ)は相談しただけだと思うよ。彼が部屋を借りてくれると言ったら、i(アイ)はそれを受け入れたと思うかい?」
「そんな負担を彼には掛けさせないよ、多分。どうだろう?ママ。私、分からない」
「実際はどうだったんだい?」
「スナックのオーナーはだいたい緊急用に部屋の一つはキープしているものだからって掛けあってくれたの」
「なるほど」
「店があるビルの上に女の子の着替え用に部屋が借りてあって昼間は空いているから暫く使っていいという事になったの」
「それは良かったね。でも着替えに皆が来るってことだね」
「寝泊まり出来れば十分。でも聞いてくれてありがたかった。ガス、電気、水道、冷暖房完備だし。夜、皆が着替えに入るけど夜は私も仕事だし。何よりお金が掛からなかったから。一人でいる時間が出来たこと、一人でいる場所が出来たことが嬉しかったよ」
「時には、孤独な時間は必要なものだからね」
「ママは何でもお見通しだね。彼には店に週に一度くらいで顔を出してもらったけど、私達、毎日会う様になった。一時間でも、三〇分でもいいから何か理由を付けて会おうとしていた。昼間だったり、私が仕事を上がる深夜だったり・・・」