切なさが加速する前に
♪ The way we were・・・

『洗濯機に繋ぐホースがボロボロなんだ、買いに行くの付き合ってくれる?』

『電池が必要』

『シャンプーきれた、私、使うメーカにこだわりがあるんだ』
『猫がいるんだよ。ママには内緒で店の女の子達が二階で飼っていたんだ。これからは私が面倒をみるんだあ。餌、近くに売っている所、あるかな?』

 i(アイ)は毎日、小出しに用を作った。彼はそれをいつも待っていてくれた。彼は仕事の合間に時間を作って買物につき合った。そして買物のネタが尽きた頃、i(アイ)は一枚のチラシを見せた。

『有酸素運動がいいんだって、駅前になんかできたよ。一〇分間、台の上に乗ってブルブルするだけでいいみたいだぞ』

 彼は入るのが恥ずかしいから嫌だと言った。一緒にいる時間が出来るとi(アイ)は誘った。
 そのチラシは半月前に彼も見た覚えがあった。i(アイ)がそのネタをキープしていたことに彼は気づいていた。
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