切なさが加速する前に
♪ The way we were・・・

「理由がなけりゃ逢えない・・・なんて不器用な二人なんだろうね」
 あたしはi(アイ)のグラスの汗を拭う。
 i(アイ)はバーボン・ソーダを喉に放り込む。

「私達は毎日、ダイエット施設で待ち合わせた。私がブルブルマシンと呼ぶダイエットマシンに並んで乗ったよ」

♪ The way we were・・・

『体脂肪測定のデータをみせてよ』

 データを見せようとはしない恋次郎から、i(アイ)はデータを奪い取った。
『なんだあ、こりゃあ。あり得ない、どうすんだ』
 彼の数値が標準値より高いのを見つけると鬼の首をとったかのようにi(アイ)は笑った。

『ヤバいよ、もう肉は食べられないよ、ベジタリアンになれよ、草食系男子になるしかないね』

『悪いけど、私は肉を食べるよ。体がもたないもの。あなたは私の横で指を咥えて見ているのね』
『これからは、私があなたの健康管理をしてあ、げ、る』
一瞬、彼は笑顔を消してじっとi(アイ)を見た。
『なあんて・・・ね』
i(アイ)はまた悪戯っぽく笑ってごまかした。
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