切なさが加速する前に

第2章 追憶

♪ I'm A Fool To Want You

 曲が変わった。この店のテーマ曲のようなものだ。

「春になって私は資格をとった。最短だったよ」
「頑張ったのだね、多分、彼もね」
「なんでもお見通しね?ママ。ハード・スケジュールの中でも何も言わず、毎日、送迎してくれたよ」
「彼の会社で仕事したのかい?」
「うん、給料もちゃんとくれたよ。特に色など付けずに規定通りにね」
「そしてくり返すんだね、僅かな時間を作って必死に会おうとする」
「でも、冬から春に変わって時間は加速するばかり・・・ “また、明日“がさよならに近づくだけ」
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