切なさが加速する前に
♪ I'm A Fool To Want You

「時が過ぎて行くことが切ないね」
 i(アイ)の過去の中にあたしも入り込んでいた。
 あたしが作るグラスが濃くなっていることに気付いた。
 それでもあたしもi(アイ)も酔い切れない、回想が夏に近づいて行く。
 痛みが、心の痛みがあたし達を酔わせないのか?夏が近づく中、i(アイ)の身体は少しずつ回復して行く。

『もう、大丈夫だよ。でもね、この暑さは厳しい〜』

 彼の会社の仕事も約束の三ヶ月が来て、ギリギリまで続けてもいいと言うi(アイ)の申し入れを彼は断った。
「それは何故だい?」
「組まれたシフトあるからだと思うよ」
「そんなことはどうにでも出来ただろう?」
「もう、夏だった。ママ、もう暑い夏がそこまで来ていたんだよ」
i(アイ)は八月の頭に地元の祭りがあるから、それに合わせて帰りたいと言った。
 あたしも(アイ)もグラスを呷るしかない。

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