切なさが加速する前に
カシャ
 氷とグラスが触れる音。
 
「夜、私は車の中で泣いていた。明日の夜にはもう田舎に着いていて、見送ることなど出来ない筈だった。私は黙って消えようとしていた・・・」
「彼がi(アイ)の嘘を見抜くと、気づいていたんだろう?」
「そうかな・・・」
「そうさ・・・」
「私、彼を振り切るためにアクセルを踏み込んだ。でも、その直後にブレーキを踏んでしまったあ。バカだね」
「ためらいのブレーキを踏んだi(アイ)を誰がバカだなんて言うもんか」

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