切なさが加速する前に
 曲が変わった。

♪ 追憶

「この曲はスターダスト・レビューの追憶。彼女が教えてくれた一曲だよ」

『切ないぞ、この曲を覚えてしまっていいの?私を失くしたら悲しくて歌えなくなっても知らないから』

「って、からかいながら歌っていたよ」

 ほんの十数分前、i(アイ)がお願いしたいと言ったのは一つではなかった。

「帰ってしまうのかい?」

『ねえ、ママ、私が帰ってから彼が現れたら、私が偶然会えたらいいなぁって思いながら、さっきまで飲んでいたよって』

「わかった、伝えるよ」

『それから、マリアさん、この曲を弾いて』
 と言ってi(アイ)は、追憶を口ずさんだ。

< 34 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop