切なさが加速する前に
 そして、曲が変わった。ヨネゾーと楓龍(たつ)の曲。

♪ 切なさが加速する前に

 ブルースをJAZZ風にアレンジしたマリアのピアノが心に沁み込む。
 
  冬木はあたしが造り出した影ではないのか?あたしが出来ないことを冬木が代わりにやってくれただけではないのか?あたしの背中の光が映し出した影が冬木だから、あたしはこうして待っているのだ。本来、影があるべき場所に戻って来るのを。
 虚しさや儚さが悲しみに変わるのであれば、影さえも光が造り出すものならば、戦うことの正しさを教えて欲しい。

 会わない・・・会いに行けば冬木がやったことを認めてしまう。戦うことの正しさなんて誰が決められるというのだ。
 あたしは待つことにしたのだ。
 戻れるか分からない男を待っている・・・それがあたしの勇気だ・・・それが、あたしの想いだ。

 ここは、FOOLという名のBAR
 愚か者が、愚か者を待つための店

 そして・・・愚か者が静かに酔い潰れるための店

 今宵もまた、愚か者が紛れ込んで来るだろう・・・
 切なさが加速する前に店を開けようか・・・

 カウベルが鳴った・・・


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