切なさが加速する前に
♪ The way we were・・・

 i(アイ)は友達を頼ってこの街に流れて来た。古いライトバンの車には生活必需品が詰め込まれていた。いつでも何処へでも逃げ出せるように車には運転シートしか空きスペースがないくらい車の中は荷物でいっぱいだった。
 友達は子供が産まれて同棲していた彼氏と入籍したばかりだった。i(アイ)に寝床を用意するのも大変な2DKのアパートなのに同郷の仲間だと言って、i(アイ)を快く迎え入れてくれた。
 i(アイ)は長居をするつもりはなかった。北国で育ったi(アイ)にとってこの街の夏は耐えがたい暑さになると感じていたからだ。季節はもうすぐクリスマス。春までには次の街へ向かいたいとi(アイ)は考えていた。
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