切なさが加速する前に
『何が食べたい?』
 彼の車に乗ってまもなく聞かれたが特に食べたいものなど浮ばなかった。
『お腹がいっぱいになれば何でもいいよ』
 i(アイ)は深く考えないで答えていた。多分、彼は色々と考えていたようだ。連れて行かれたのは大きなショッピングモールだった。
『ここなら色々な店がある、視て回ろう。食べたいものがあったらそこへ入ろう』
 ショッピングモールには映画館も入っていた。
『へえ、ここはショッピングモールなんだね。映画館もあるよ。あの映画、今年ヒットするって言っているね、でもそれが私達にとって面白いかは別。映画なんて生きるのに無くても平気、恋次郎もそう思うタイプじゃないかしら?』
 彼はヒットする映画なら後学のために今度一緒に観ようと誘って来た。
『しょうがないな、男が一人で観るような映画じゃないし、女が一人で観るようなものでもない、いいよ!一緒に行ってあげよう』
 とi(アイ)は悪戯っぽく笑って見せた。
 i(アイ)は何でもありそうな洋食レストランを選んで入った。
『私、ハンバーグ・ランチ、ライス大盛りで』
 i(アイ)は夕食は菓子パンで済ませようと考えていた。その時、彼が自分の分はパスタだけ注文しているのを見て彼は家で     昼食を済ませてから出て来たのだとi(アイ)は感じた。
 彼には家族がいるということを一瞬忘れかけた自分を恥ずかしいとi(アイ)は思った。
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