送り犬さんが見ている
「………休暇、どうしよう。」
帰る宛てもないし、せっかくの休暇なのだから、仕事はしたくない。
しばらく悩み抜いた末、私は去年と同じ過ごし方をすることにした。
「神社参り…くらいしかないよね。」
お屋敷から遠く離れた山の中の神社まで、半日かけて歩いてお参りに行き、それが済んだらまた半日かけて、歩いてお屋敷へ戻る。これを3日繰り返す。
それがここ数年の、休暇の過ごし方だった。
特別信心深いわけではない。
でも神社特有の静謐な感じは好きだったし、相談相手のいない私にとっては、神頼みくらいしか気を紛らわせる方法を知らない。
それに必要なお金といえばお賽銭くらい。これほど懐事情に優しい趣味は無いと思う。
敢えて遠くの神社を目指すのも、なるべく時間をたっぷり使いたいのと、…少しでもお屋敷から離れた所へ行きたいから。
「思い立ったが吉日ね。」
休暇は半月後。
道中は険しい道も多いから、準備をしっかり整えておかなければ。地図をよく確認して、草鞋も余分に編んでおこう。
そして忘れてはならないのが、私が唯一心を開ける“友達”の面倒。