ロマンスに道連れ
肩よりちょっと下で胸元よりちょっと上くらいの黒髪は、内巻きストレートになっている。
俺に寄ってたかってくるタイプにはいない清楚系だ。目元はしっかりとした二重だけれど派手なメイクを施されてるわけでもなく、どちらかというとナチュラルっぽいし。
唇の色は限りなく人間味のある薄ピンクで、真っ赤なリップが似合わなそうな顔をしている。これは清楚系を好む俺からしたら誉め言葉だけれど。
それにしても信じられないくらい肌が白い。テレビの中で見る女優やアイドルの透明感と同じくらい透き通っている綺麗な肌に、さっきの暴言と出会い方が違ったらうっかり惹かれていたところだろう。
華奢で細い足は短くも長くもないベストなスカートの長さで隠されている。このくらいの長さのほうが中を想像できるから男は好きだと思うけれど、実際の女子高生はスカートが短すぎてマジで階段の下にいたら見えるからなあ。
「見た目は個人的に100点っすね。センパイってモテますか?」
「ありがとう、モテると思う?」
「まあ黙っていればモテるんだろうなと」
「その言葉そっくりそのまま返していい?」
「残念、俺は喋っててもモテます」
「ほんっとに可愛くないね」
名前も知らない先輩に可愛くないとまで言われる俺可哀想ですよね、
そう返せば口をへの字に曲げられた。
「とりあえず、保健室でいちゃつくのはやめて」
「なんでセンパイが口出しするんですか?」
「保健委員なので」
「保健委員って保健室で仕事しなくないっすか?クラスメイトの体調管理って友達が言ってましたけど」
「肩書が保健委員だから、わたしは保健室にいる権利がある」
「めちゃくちゃっすね、じゃあ俺も保健委員になっていいすか?」
「やだよ、絶対仕事しないじゃん」
それもまあ否めないのでにこにこと笑ってみせれば、通用しないぞと言わんばかりにカーテンをピシャリと閉められた。
少しだけ緩めたネクタイを元に戻して、上靴を履いて今度は自分でカーテンを開く。先輩は正面のソファに座って俺のほうを見ていた。
「きみ、名前は?」
「吉野璃月」
「璃月、かあ。だからりっくんなの?可愛いあだ名だね」
「センパイにりっくんて呼ばれるのは嫌なんでやめてください」
「なんだそれ、生意気だな」