ロマンスに道連れ
「もう広瀬に手懐けられてんのかと思ってたわ」
「違いますよ、つうか先生も俺のこと結構利用してきてませんか、最近」
「ま、広瀬を一人で帰すのはアイツの兄貴も不安だって言ってたし。広瀬の友達も心配して近くまで一緒に帰っててくれたけどなんせ受験生だから予備校に行くとかで帰るやついないって言ってたからさ」
「俺の都合は聞かないんですか」
「女の子と遊ぶ以外の予定ないだろ?」
「心外ですね」
「まー、莉子センパイの看病は頼んだぞ忠犬」
「だから手懐けられてねえし!」
彼女が本当に体調悪い場面にはもう既に何度か遭遇してしまっている。
顔色は悪いのにいつもみたいにへらへら笑おうとするから、なんだかむかつく。弱ってるなら弱ってる顔をすればいいのに、仕方なく肩を貸しながら思う。
日に日に外は暑くなり、センパイの格好で過ごすと今度は熱中症になるだろう。そう言えば去年なったよと呑気に笑っていたので呆れた。
危なっかしくて、不安定。
会わなかったらどこかで倒れてしまってるんじゃないかって心配になるし、いつもの調子で元気だと心配損をした気持ちになる。
「今の吉野の脳内広瀬ばっかだな」
「違います、お姉ちゃんを放っておけない弟みたいな気持ちです」
「へえ?」
「好きとはわけが違うんで」
「そうか?わかんねえなイマドキの若いの」
「俺もよくわかんないけど、認めたら負けっすよね」
「余計わかんねえよ」
そもそもアイツはあんたのこと好きなんですけど。
なんてこと、ちっともわかりもしないんだろうなこの人は。
浦野にとっての広瀬莉子は心配でしょうがない友人の妹なだけだろう。そんなことは当人もきっとわかっているのだ。