ロマンスに道連れ
Nice to meet you!
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高校生になったばかりの4月。
中学卒業後に地元の先輩らに変に遊び方を教えてもらったせいで高1なのにませていた自覚はある。
どちらかというと俺は可愛い顔をしているらしく、わかりやすく年上ウケがいい。おかげで入学当初から学校の先輩達にうまくつけこんで遊んでいた。
「りっくん?」
いくら顔が可愛い子犬系だとしても中身がそれに伴っていないことだけは自覚済みだ。
しっぽブンブン振って喜んでワンワンするようなキャラじゃないが、意外とそういうギャップにまんまと嵌る女子もいる。
りっくんと呼ばれるのは年下扱いというか、可愛い者扱いをされているみたいであんまり好きじゃない。
だからといってどうでもいい女にりつきと呼ばれるのも嫌なので、おとなしくりっくん呼びを許容している。
「ん?」
「今うわの空だったでしょ?」
「うん、ねむい」
「眠いの~?かわいい」
「でも全然、元気だよ?」
「ほんとー?」
「うん、ホント」
制服のリボンにゆっくりと指を伸ばせば、女は「やだあ、そう言う意味―?」なんてわかっていたくせに知らないそぶりを見せる。
保健室の表の表記に先生が不在と書いてあった。これはご自由にどうぞの類義語だと俺は思っているので侵入チャンスである。
養護教諭で大方ちょろくて先生らしくない浦野は、俺がここに来るのは常連だとわかっているはずなので断りはナシである。
まあ、こんなことしてるなんて知ったら死ぬほど怒られそうだけど。
学校内で遊べる場所なんて大してなくて、はじめて保健室を選択してみた。俺のお気に入りの空間に好きでもない女を連れ込むのは少々気が引けるが、眠いことには変わりない。
「やだ、」
「ほんとに?」
「いじわる」
女ってみんな同じことしか言えねえのな。
イジワルしてるつもりなんかさらさらないし、こういうのは焦らしたほうが楽しいって先輩も言ってたし。
でも残念ながらこの女に時間をかけるほど俺は紳士じゃないので、とっととこと済まして終わらせるつもりだ。
「――――あのさ、聞こえてるんだよね全部」
「っ、!?」
「残念ながらこの部屋はそういう場所じゃないので他行ってもらってもいいですか」