友達婚~5年もあいつに片想い~
「ねえよ。」

武蔵の言葉を聞くと、大樹は財布からお金を出した。

「これで間に合いますね。」

「はいはい。」

武蔵はこっちを見てくれない。

「帰るぞ、梨衣。」

「えっ……」

「早く!」

大樹の大きな声に圧倒されちゃって、私は慌てて席を立った。

「武蔵、ごめんね。」

「おう。」

一応返事はしてくれたけれど、きっと機嫌は悪いと思う。

「梨衣!」

大樹の呼ぶ声に、走って行った。

店員さんの「ありがとうございました。」が、虚しく聞こえる。


外に出ると、大樹が背中で怒っているのを感じていた。

謝らなきゃいけないって、分かっているけれど、声を掛けられない。

ただひたすら、大樹の後を追いかけていた。
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