爪先からムスク、指先からフィトンチッド
「うーん、すべすべしてる。シルクの寝具ってつるっつるだなあ」
初めて薫樹の寝具を見たときに布団の薄さが気になったが、眠ってみて温かさは重さではないのだと知った。
「これから……ここで……」
横たわり落ち着かずシーツを撫でていると、薫樹がそっと寝室の入ってきた。
すっとベッドに腰かける。
「芳香。寝てる?」
芳香は身体を起こし「いえ……」と言葉少なに答えた。

薫樹は芳香のボブの髪をそっと耳に掛け、頬に触れ唇を重ねてくる。ゆっくり時間をかけ、唇の温もりを確認したのち、またゆるゆると舌が唇を舐め、濡らし、そっと内部へ忍び込む。
優しく甘い口づけを交わしながら薫樹は芳香を横たわらせる。
芳香がはっと気づくと薫樹はすでに裸体を晒している。ぼんやりとした照明の下で薫樹の白い肌と眼鏡が光る。
薫樹は芳香のパジャマのボタンを一つ一つ外す。その下にはしっかりとブラジャーをつけていた。
背中のホックに手を掛けられたとき、芳香はぎゅっと目をつぶる。小さい膨らみを見られることが恥ずかしい。
「寒くない?」
上半身を脱がせてしまうと薫樹は気遣うように尋ねる。
「は、はい。寒くないです」
緊張と興奮で温度など芳香には分らなかった。パジャマのズボンとショーツをおろされた時には心臓の音しか分からなかった。
薫樹に服を脱がされただけで、やけに興奮し身体の内部が熱くなってくる。
肌と肌が重なり合う。薫樹の滑らかな肌が、汗ばみしっとりした芳香の肌を這う。
口づけと肌を触る大きな手の感触にいつもはリラックスすることもあるが、今日は違う。
両手で薫樹は両乳房を包み込み、揉みしだく。
彼は以前芳香が言ったように上から順番に下へ降りてくるようだ。
小さな乳房を揉まれながらやはり小さな突起を舐められ甘噛みされ芳香は呻く。
「あっ、あっ、うっ、ふっ」
舌はゆるゆると円を描き動く。芳香の香りが強くなってきた。
「いい香りがする。今日はたっぷりと楽しもう」
「あぁ、はぁ、や、だぁ」
羞恥心により言葉だけで抵抗を見せるが、ルームフレグランスの効果だろうか、いつもの彼女よりも声が甘くおねだりをする猫のようになっている。
早く強い芳香のもとへ薫樹は急ぎたかったが、ぐっと我慢をし、最後の楽しみのように太腿と膝に舌を這わせようとし、少し身体の向きを変えた。

「あっ、甘くて、え、えっちな匂いがする――」
上気した頬と潤んだ目で芳香は荒い息をしながら言う。
「ん? 甘さ? バニラはまだ香ってこないはずだが……」
今の時間はまだスパイシーな香りがしているはずだ。少しタイムラグがあるのだろうか考え、薫樹が動きを止めた瞬間だった。
「も、もう、だめ。我慢、できない」
のっそりと芳香は身体を起こし、息を荒くしている。
「どうしたんだ?」と言葉を発する前に彼女は薫樹のボクサーショーツに手をかけ、彼の起立したものを取り出した。
「い、いきなり、何を?」
「はぁ、はぁ、こ、ここから、いい、匂いがする」
そう言いながら芳香は股間に顔をうずめ、直立したモノをさすり、頬ずりし、匂いを嗅いで、口に含んだ。
「うっ、よ、芳香……」
まさかここまで大胆になるとは予想をしていなかった薫樹はためらったが、彼女の口淫に強い欲情を感じる。
芳香は夢中でしゃぶり舐めあげている。
「うっ、うっ、ま、さか。こんな……」
薫樹を愛撫する芳香からさらに強いムスクが漂い始める。
「これじゃあ、僕も我慢できない――」
吸い付いている芳香を離そうと試みたが難しい。
「こうなったら――」
< 38 / 106 >

この作品をシェア

pagetop