爪先からムスク、指先からフィトンチッド
頭を下げ、入って上げるとダイニングで背の高い男が立って何か作業をしている。後姿ではあるが見覚えがあった。
「み、ミント王子?」
「ん? ああ、芳香ちゃん、いらっしゃい」
明るい笑顔で涼介はまるで我が家のように芳香を出迎える。服装の会社の前で会ったときのスーツ姿とはまるで違い、薄いグリーンのパーカーに白いハーフパンツという軽装ぶりだ。
「こ、こんにちは……」
「清水君が美味しいモロッコミントティーをご馳走してくれるようなんだ」
「ああ、そうなんですかあ……」
「少し待ってて」
せっかく自分が振舞いたかったのにと思い、持ってきたミントに一瞥をくれ芳香は荷物をリビングの隅に置き、ソファーに腰かけた。
ふうっとため息をつき、すべすべしたヒノキのセンターテーブルを撫でて木の香りを嗅いでいると、清水涼介が「じゃ、そちらに持っていきますので」と作業を見ている薫樹にリビングに移動するように促した。
カチャカチャと茶器が運ばれる音がし、銀の丸い盆に、やはり銀のポットとグラスが乗せられてテーブルに置かれる。
「うわっ、本格的」
芳香は自分が淹れようと思っていたグレードをはるかに上回っている様子に、自分がやらなくて良かったかもと考え直した。
涼介はポットからミントティーを立ったままグラスに注ぎ始めた。器用なものでこぼれることはなく、ふわっと爽やかな香りが部屋を包み込む。
「ほぉ。素晴らしい」
「わあー。いい香りー」
爽快感が突き抜ける。
「さあ、どうぞ。今回はアップルミントを多めにしてみましたよ」
芳香の隣に薫樹は座り、涼介は床に胡坐をかく。
「あ、こっちへどうぞ」
慌てて芳香は立ち上がり、涼介をソファーへ促すが「ありがとう。俺、床好きだから気にしないで」と爽やかな笑顔で答える。
「は、はあ」
非常にカジュアルな振る舞いで屈託なく明るく爽やかでしかも濃い顔だがイケメン。
先日、店にミントを買いに来た客の房枝を思い出す。一番初めの出会いがなければ彼女のように涼介を素直に素敵だと思えたのかもしれないが、おそらく足フェチだろう彼を芳香は『残念なイケメン』だと思うだけだった。
一方、涼介は、床が好きというのは嘘ではないが実は芳香の足を眺めてるだけだった。(スリッパ邪魔だなあ)
踵から足首、ふくらはぎのラインを眺めて悦に入ってはいるが、本当は爪先が好きだ。
「み、ミント王子?」
「ん? ああ、芳香ちゃん、いらっしゃい」
明るい笑顔で涼介はまるで我が家のように芳香を出迎える。服装の会社の前で会ったときのスーツ姿とはまるで違い、薄いグリーンのパーカーに白いハーフパンツという軽装ぶりだ。
「こ、こんにちは……」
「清水君が美味しいモロッコミントティーをご馳走してくれるようなんだ」
「ああ、そうなんですかあ……」
「少し待ってて」
せっかく自分が振舞いたかったのにと思い、持ってきたミントに一瞥をくれ芳香は荷物をリビングの隅に置き、ソファーに腰かけた。
ふうっとため息をつき、すべすべしたヒノキのセンターテーブルを撫でて木の香りを嗅いでいると、清水涼介が「じゃ、そちらに持っていきますので」と作業を見ている薫樹にリビングに移動するように促した。
カチャカチャと茶器が運ばれる音がし、銀の丸い盆に、やはり銀のポットとグラスが乗せられてテーブルに置かれる。
「うわっ、本格的」
芳香は自分が淹れようと思っていたグレードをはるかに上回っている様子に、自分がやらなくて良かったかもと考え直した。
涼介はポットからミントティーを立ったままグラスに注ぎ始めた。器用なものでこぼれることはなく、ふわっと爽やかな香りが部屋を包み込む。
「ほぉ。素晴らしい」
「わあー。いい香りー」
爽快感が突き抜ける。
「さあ、どうぞ。今回はアップルミントを多めにしてみましたよ」
芳香の隣に薫樹は座り、涼介は床に胡坐をかく。
「あ、こっちへどうぞ」
慌てて芳香は立ち上がり、涼介をソファーへ促すが「ありがとう。俺、床好きだから気にしないで」と爽やかな笑顔で答える。
「は、はあ」
非常にカジュアルな振る舞いで屈託なく明るく爽やかでしかも濃い顔だがイケメン。
先日、店にミントを買いに来た客の房枝を思い出す。一番初めの出会いがなければ彼女のように涼介を素直に素敵だと思えたのかもしれないが、おそらく足フェチだろう彼を芳香は『残念なイケメン』だと思うだけだった。
一方、涼介は、床が好きというのは嘘ではないが実は芳香の足を眺めてるだけだった。(スリッパ邪魔だなあ)
踵から足首、ふくらはぎのラインを眺めて悦に入ってはいるが、本当は爪先が好きだ。