爪先からムスク、指先からフィトンチッド
少し湿った髪と頬を撫でると、環はその大きな手を取り、掌にキスをする。
「ベッド狭いかな。ダブルでも俺たちには狭い気がする」
環は少女のように笑った。
「ねえ、外で。――ミントが見える――外で抱いて」
「え? 外で?」
「誰か来るの?」
「いや、来たとしてもたぬきかイタチかな」
「じゃあ、お願い」
「動物でも見せるのが嫌だけど」
「モデルだから見られるの平気なの」
二人でクスクス笑う。 涼介はシーツごと環を抱きかかえ、外に出る。
清涼なミントの香りとここちよい気温は確かに家の中に居てはもったいない。
東屋の柔らかい芝生にシーツと一緒に環をおろす。
「ああ。君は緑に良く映える」
じっと笑んで見つめる環に軽くキスをして、涼介も全裸になった。
「あら、あなたも彫刻みたいだわ。服を着て仕事をするのがもったいないくらい」
上に覆いかぶさった涼介の筋肉質の胸元を撫でた。
「そんなに堂々とされて、見られると俺が恥ずかしいな」
「ふふっ、私は全裸でうろうろするのは当たり前だったし、みんなそうだった。――だけど、変ね。今は少し恥ずかしいわ」
肌と肌を合わせて、温かさと鼓動を共有する。
口づけを交わし、舌を絡め、指先も絡め合う。
涼介は指先にキスし、ゆっくりと手首から肩まで丁寧に優しく食む様に上っていく。
環はくすぐったさと心地よさの両方を感じ、涼介の愛撫を堪能すべく目を閉じて集中している。
くびれたわき腹に舌を這わされると、環は「ふふっ、くすぐったいわ」と我慢できずに笑った。
「ごめんごめん。くすぐったいのは感じやすいってことなんだけど、ここはやっぱりくすぐったいよね」
明るく笑いながら涼介は環のウエストから臀部に掛けてひと撫でする。環も涼介の背筋をするっと指先でなぞる。
「はははっ、くすぐったいな」
大きな身体で二匹の獣のようにじゃれ合う。
涼介が環の長い足を曲げさせ、小さな爪先をとらえ、指の一本一本に口づけをすると彼女はふるふると身体を震わせ短い声をあげる。
柔らかい踵を持ち、足の甲に舌を這わせ、十分に足を堪能しようとする涼介に環は喘ぎながら質問する。
「ど、どうして、そんなに足が好きなの? み、んなはバランスが悪いって、あ、ん、あんまり好まれなかったけど」
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