爪先からムスク、指先からフィトンチッド
1DKのアパートは必要最小限のものしかなかったが、こまめに掃除され、清潔感があり、生成りと藍色で構成された部屋は薫樹にとって居心地がよいらしい。
「清水君と環の結婚式はなかなかよかったよ」
「へえ、社交界みたいなんでしょうねえ」
芳香と薫樹は二組の結婚式の感想をそれぞれ言い合った。夢見るようなうっとりする芳香の表情を見ると薫樹はなんだか身体が熱くなるのを感じ、ネクタイをほどいてジャケットを脱いだ。
「あ、それ、かけますね」
ハンガーを出し、ジャケットを手に取るとする芳香の手を薫樹は握る。
「あ、あの」
「芳香」
グイッと引っ張られ芳香は薫樹の胸元に抱かれる。ふわっと香りに包まれながら、唇も包み込まれ甘い口づけが交わされる。
「あっ」
薫樹は芳香のカットソーをブラジャーごとめくり上げ、胸の間に顔をうずめる。
「あ、やっ、い、きなり、だ、だめ」
「なんだか今日は待てない」
いつもよりも力強く両乳房を揉みしだかれ、つんと張り詰めた乳頭を舐められ甘噛みされると芳香の腰の力が抜けてしまった。
「あ、んん、だ、だめ……あ、ん」
部屋に怪しい香りが立ち込め始める。狭い部屋はセクシーな麝香の香りで満ちてきた。
「これは……たまらないな」
散々乳房を弄んだあと、薫樹は芳香のスカートに手を入れパンティーをはぎ取る。
「あ、え? え?」
芳香はいきなりの愛撫と珍しく強引な薫樹に戸惑いを隠せない。
「いいものがある」
パンティーを脱がせた後、薫樹は引き出物の中から、小さな箱を取り出した。
「これも清水君が香り付けしたものらしいよ」
「え、そんなものが……」
グローバルな二人は引き出物にコンドームを入れていた。『不用意なセックス』は子供たちにとって不幸になることであると施設で育った環はよく知っている。
コンセプトに感心している芳香を横に、薫樹は愛撫の手を緩めない。スカートの中に潜り込み、芳香のムスクが漂う香りの元へ顔をうずめる。
「きゃっ」
香りを嗅ぎながら、舌を内部にねじ込み、蜜を出させ、舐めとる。芳香は性急な強い刺激に足をびくびく痙攣させた。
「あん、ああん、も、もう……」
「欲しくなってきたかい?」
すっかりと濡れそぼり、熱くひくつく蜜源を二本の指で浅く深く出し入れしながら薫樹は香りを堪能している。
「あ、ん、ほ、欲しい……」
「どうしようか……。先にイキたい?」
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