雪その4 ~雪なんて~
寒い。
「雪か,最悪」
「えっなんで?」
雪なんて
「ひどいと電車止まるし,会社行く人は歩いてかなきゃなんねぇし。歩きずれぇし」
「ふっ。うん,滑るよね」
「じゃなくて,足跡つけたり黒くなってんの見ると,胸くそ悪くて人が一回通ったとこばっか見つけて通らなきゃなんねぇから」
「そ……ふふっ,ごめっ…そうなんだ」
「さっきからなんなの」
「いや,あんまり自分以外の事ばっかり気にしてるから」
しかもと彼女は続ける。
「雪,ほんとは大好きじゃん」
……そんなわけない。
「でも良いよね」
俺の話なんて聞いてない彼女は,素手で雪を掬い上げると,俺の前まで持ってきて
「ほらっ」
真上にふわっと放った。
小さな粒が2人の上から降ってくる。
「綺麗でしょ? それに……」
寄ってくる彼女になんだと視線を向けると
「手が冷たくなったと手を繋ぐ理由ができる」
ふふんと笑う彼女に,俺は理由なんか要らねぇよと笑った。
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。

総文字数/32,492

恋愛(学園)68ページ

表紙を見る
臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。【番外編】

総文字数/17,447

恋愛(学園)53ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop