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陽向Side
そろそろ春の兆しが見え始める頃の卒業式。
俺は今日、この3年間の思い出が詰まった北高校を卒業する。小学校の頃から続けているサッカーが大好きで、高校でも迷う事無くサッカー部へ入部した。
北高校は別にサッカーの強豪校という訳ではなかったけれど、顧問の田仲先生に出逢えたのはでかかった。
部員一人一人の個性を大事にして、腐りそうになる奴にはそっと手を伸ばしてくれる。そんな田仲先生に憧れて、俺も田仲先生のような教師になりたい。そしていつかはサッカー部の顧問になって、生徒達にサッカーの楽しさを伝えられるような存在になりたいと思った。
だから、この土地から少し離れた田仲先生の母校の大学の教育学部に受かった時はめちゃくちゃ嬉しかったな。
「陽向、一人暮らし頑張れよ」
「連絡するからお前もしろよ」
「分かってるよ、お前らも元気でな」
卒業式の後、サッカー部の仲間達に囲まれて談笑していた時、大きな目に薄らと涙を浮かべながらこちらをじっと見つめてくる風花の姿を見つけた。
あぁ、綺麗だな。なんでこんな綺麗な子が俺の彼女なんだ?自分でも馬鹿みたいだと思うけれど、涙目の風花を見るとそんな気持ちになる。
風花が初めて俺に話し掛けてきたのは、夏の県大会の予選で負けた後だ。
つまりは、俺たち3年はその予選に負けた時点で部活引退だったのだけど、負けた事やこの仲間達でもうサッカーに打ち込む事はないかと思うと泣けて感傷にふけってしまっていた時に、突如として風花は俺の生活に現れた。
「高村陽向先輩ですか?私は木下風花っていいます。一目惚れしました。私と付き合って下さい」
顔を赤らめながら告白をしてくれた風花は可愛かったけれど、俺は、一目惚れしましたなんて言われても信じられなかった。
自分で言うのも何だけど、俺は女子受けする見た目らしい。テレビ観ないからよく知らないけど今旬な何とかっていう俳優に似ているみたいだ。それもあって、外見だけを見て好きだなんて言われてもそれに対する俺の返事はNOだった。
だから風花に対しても「気持ちは嬉しいけど、ごめん」って適当に断った。大抵の女の子は一度断れば引き下がる。
それなのに、風花は「何故ですか?理由は?」と食い気味で言ってきた。
あれ?この子普通とは少し違うのか?なんて気持ちが湧き上がってきたけれど、正直に「いや、一目惚れしましたって言わたから。外見だけ見て好きになられても信じられないっていうか……」と言えば「先輩が見た目で判断されるのを好まないのは理解しました。だけど、それで『分かりました』って諦める程、私の気持ちも軽くないので。とりあえず今日は引き下がりますが、また改めて告白します」と断言して去って行った。
何だ?あの子。風花の第一印象、強烈な子。
その後、本当に風花は諦めずに折を見て俺に告白をしてくるようになった。それは、昼休みだったり、放課後だったり。朝、高校の門の前で待ち伏せされて告白された事もあったな。いつから待ってたんだか。
さすがにその時「あぁ、この子本気なんだな」って分かった。そして、必死で俺に好意を伝えてくれるひたむきさに、いつの間にか俺の心も絆されていった。
そして、両手じゃ数え切れない位告白された時、とうとう俺はOKをした。
OKされた事を一瞬理解出来なくて「俺も好き」って言った時、風花は泣き出して、その綺麗な涙を見て、俺もとっくに風花の事を好きになってたんだなって気付いた。
付き合い出した俺達だけれど、俺の受験勉強もあってなかなか恋人らしい時間を沢山は取ってやれなかった。
けど、それでも風花と付き合うって決めたからには俺なりに風花の事を大事にしたかったし大事にしてきたつもりだ。
「風花ごめん、お待たせ」
「ううん。陽向、改めて卒業おめでとう」
「ありがとう。手出して?」
差し出された風花の手の平に、制服の第二ボタンを引きちぎって置いた。自分らしくないキザな行動だったけれど、風花が嬉しそうだったから良し。
俺は今日、この3年間の思い出が詰まった北高校を卒業する。小学校の頃から続けているサッカーが大好きで、高校でも迷う事無くサッカー部へ入部した。
北高校は別にサッカーの強豪校という訳ではなかったけれど、顧問の田仲先生に出逢えたのはでかかった。
部員一人一人の個性を大事にして、腐りそうになる奴にはそっと手を伸ばしてくれる。そんな田仲先生に憧れて、俺も田仲先生のような教師になりたい。そしていつかはサッカー部の顧問になって、生徒達にサッカーの楽しさを伝えられるような存在になりたいと思った。
だから、この土地から少し離れた田仲先生の母校の大学の教育学部に受かった時はめちゃくちゃ嬉しかったな。
「陽向、一人暮らし頑張れよ」
「連絡するからお前もしろよ」
「分かってるよ、お前らも元気でな」
卒業式の後、サッカー部の仲間達に囲まれて談笑していた時、大きな目に薄らと涙を浮かべながらこちらをじっと見つめてくる風花の姿を見つけた。
あぁ、綺麗だな。なんでこんな綺麗な子が俺の彼女なんだ?自分でも馬鹿みたいだと思うけれど、涙目の風花を見るとそんな気持ちになる。
風花が初めて俺に話し掛けてきたのは、夏の県大会の予選で負けた後だ。
つまりは、俺たち3年はその予選に負けた時点で部活引退だったのだけど、負けた事やこの仲間達でもうサッカーに打ち込む事はないかと思うと泣けて感傷にふけってしまっていた時に、突如として風花は俺の生活に現れた。
「高村陽向先輩ですか?私は木下風花っていいます。一目惚れしました。私と付き合って下さい」
顔を赤らめながら告白をしてくれた風花は可愛かったけれど、俺は、一目惚れしましたなんて言われても信じられなかった。
自分で言うのも何だけど、俺は女子受けする見た目らしい。テレビ観ないからよく知らないけど今旬な何とかっていう俳優に似ているみたいだ。それもあって、外見だけを見て好きだなんて言われてもそれに対する俺の返事はNOだった。
だから風花に対しても「気持ちは嬉しいけど、ごめん」って適当に断った。大抵の女の子は一度断れば引き下がる。
それなのに、風花は「何故ですか?理由は?」と食い気味で言ってきた。
あれ?この子普通とは少し違うのか?なんて気持ちが湧き上がってきたけれど、正直に「いや、一目惚れしましたって言わたから。外見だけ見て好きになられても信じられないっていうか……」と言えば「先輩が見た目で判断されるのを好まないのは理解しました。だけど、それで『分かりました』って諦める程、私の気持ちも軽くないので。とりあえず今日は引き下がりますが、また改めて告白します」と断言して去って行った。
何だ?あの子。風花の第一印象、強烈な子。
その後、本当に風花は諦めずに折を見て俺に告白をしてくるようになった。それは、昼休みだったり、放課後だったり。朝、高校の門の前で待ち伏せされて告白された事もあったな。いつから待ってたんだか。
さすがにその時「あぁ、この子本気なんだな」って分かった。そして、必死で俺に好意を伝えてくれるひたむきさに、いつの間にか俺の心も絆されていった。
そして、両手じゃ数え切れない位告白された時、とうとう俺はOKをした。
OKされた事を一瞬理解出来なくて「俺も好き」って言った時、風花は泣き出して、その綺麗な涙を見て、俺もとっくに風花の事を好きになってたんだなって気付いた。
付き合い出した俺達だけれど、俺の受験勉強もあってなかなか恋人らしい時間を沢山は取ってやれなかった。
けど、それでも風花と付き合うって決めたからには俺なりに風花の事を大事にしたかったし大事にしてきたつもりだ。
「風花ごめん、お待たせ」
「ううん。陽向、改めて卒業おめでとう」
「ありがとう。手出して?」
差し出された風花の手の平に、制服の第二ボタンを引きちぎって置いた。自分らしくないキザな行動だったけれど、風花が嬉しそうだったから良し。