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一人暮らしの家に戻って、大学も始まった。
けれども、俺はふとした瞬間に風花を思い出す。
あの日、俺が約束の時間をちゃんと守っていたら風花と別れずに済んだのか?
なぁ、風花。風花の心に俺はまだいる?
なぁ、風花。会いたいよ。
風花と一緒に撮った画像を見ながら、俺は風花の事を諦めきれずにいた。
電話は出てもらえないから、メッセージを送る。
時間が経って既読にはなるから、まだブロックはされていないみたいで少し安心する。
けれど、メッセージが返ってくる事はなく、季節は秋に移ろいでいった。
もうすぐ風花の誕生日。俺はどうしても風花の誕生日を祝いたくて、またメッセージを送った。
『どうしても風花の誕生日を祝いたい。10月の第3日曜日、11時。あの水族館で待ってる。風花が来ても来なくたってずっと待ってる』
無理矢理取り付けた約束の当日。
俺はポケットに風花への誕生日プレゼントを忍ばせて風花を待った。
待つ事ってこんなに不安になるんだな。まだ30分も待っていないのに、そんな勝手な事を思う。
あの日、風花はどれだけの気持ちを抱えながら俺の事を5時間も待ち続けていたんだろう。
思い返せば風花にはずっと我慢をさせていたのかもしれない。そんな事を今更になって気付く俺は大馬鹿野郎だ。
俺が決めた約束の時間の11時を少し過ぎた位に、風花はやって来た。
「久しぶり」
「うん、久しぶり、陽向」そう挨拶を返してくれた風花はいつの間にか少し大人びて見えた。改めて、夏の事を謝罪する俺に対し、風花は「もういいよ、終わった事だから。それより、最後に楽しもう?ね?」と苦笑いをこぼした。
”最後”それを聞いて、本当に俺達は別れたんだと改めてショックを受ける。
事前に買ってあったチケットを風花に渡して館内に入る。
最初は少しだけ気まずかった会話も水槽の中を自由自在に動き回る魚や生き物たちを見ていると、段々と弾み出す。
そして、俺はやっぱり思う。まだ風花が好きだって。
クラゲの水槽を真剣に見る風花を水槽越しに見つめながら”やり直したい”、”どうしたらやり直せる?”そんな事ばかりを考えていた。
だけど意気地なしの俺はなかなか『風花がまだ好きだ。風花ともう1回やり直したい』そう切り出せずにいる。
メインのイルカショーも見て、そろそろお別れの時間。
「心配だから駅まで送るよ」と申し出る俺に、風花はばっさりと「そこまでしてもらう義理はもうないよ」と断ってきた。
もう無理なのか?
風花はもう俺を見ていない。
だけど、最後に俺の気持ちを伝えようとした時、風花が口を開いた。
「じゃあ、陽向元気で。高校教師の夢、絶対叶えてね。次の彼女は大事にしてあげてね、なんて余計なおせっかいか。今までありがとう、バイバイ」
それは、今まで見た風花の笑顔の中で一番綺麗な笑みだった。
引き止めようとした俺を見向きもせずに、風花は踵を返し去って行く。こちらを一度も振り返らずに。
”次の彼女は大事にしてあげてね”なんてそんな言葉、風花から聞きたくなかった。
俺はまだ風花が好きだよ。風花だけが好きだよ。
言えなかった言葉を噛みしめる。ポケットに入れた、結局渡せなかった風花への誕生日プレゼントのブレスレットをポケット越しに握り締めながら。
呆然と立ち尽くす俺は、込み上げる涙を堪えきれなかった。
そんな俺をあざ笑うかのように、または同情するかのように、空も泣き始めた。
雨の日はサッカーが出来ないから嫌いだった。
風花も雨だと俺が練習している姿を見る事が出来ないから嫌いだと言っていたな。
失って尚更気付く。風花の存在の大きさを。
いつだって好意を伝える事をいとわずに、真っ直ぐに俺にぶつかってきてくれた風花。
大好きだった。大好きだよ。
涙がこぼれ落ちる度に、後悔が1つ生まれる。
風花が去って行った道を見つめながら、俺はその場にしゃがみ込んだ。
けれども、俺はふとした瞬間に風花を思い出す。
あの日、俺が約束の時間をちゃんと守っていたら風花と別れずに済んだのか?
なぁ、風花。風花の心に俺はまだいる?
なぁ、風花。会いたいよ。
風花と一緒に撮った画像を見ながら、俺は風花の事を諦めきれずにいた。
電話は出てもらえないから、メッセージを送る。
時間が経って既読にはなるから、まだブロックはされていないみたいで少し安心する。
けれど、メッセージが返ってくる事はなく、季節は秋に移ろいでいった。
もうすぐ風花の誕生日。俺はどうしても風花の誕生日を祝いたくて、またメッセージを送った。
『どうしても風花の誕生日を祝いたい。10月の第3日曜日、11時。あの水族館で待ってる。風花が来ても来なくたってずっと待ってる』
無理矢理取り付けた約束の当日。
俺はポケットに風花への誕生日プレゼントを忍ばせて風花を待った。
待つ事ってこんなに不安になるんだな。まだ30分も待っていないのに、そんな勝手な事を思う。
あの日、風花はどれだけの気持ちを抱えながら俺の事を5時間も待ち続けていたんだろう。
思い返せば風花にはずっと我慢をさせていたのかもしれない。そんな事を今更になって気付く俺は大馬鹿野郎だ。
俺が決めた約束の時間の11時を少し過ぎた位に、風花はやって来た。
「久しぶり」
「うん、久しぶり、陽向」そう挨拶を返してくれた風花はいつの間にか少し大人びて見えた。改めて、夏の事を謝罪する俺に対し、風花は「もういいよ、終わった事だから。それより、最後に楽しもう?ね?」と苦笑いをこぼした。
”最後”それを聞いて、本当に俺達は別れたんだと改めてショックを受ける。
事前に買ってあったチケットを風花に渡して館内に入る。
最初は少しだけ気まずかった会話も水槽の中を自由自在に動き回る魚や生き物たちを見ていると、段々と弾み出す。
そして、俺はやっぱり思う。まだ風花が好きだって。
クラゲの水槽を真剣に見る風花を水槽越しに見つめながら”やり直したい”、”どうしたらやり直せる?”そんな事ばかりを考えていた。
だけど意気地なしの俺はなかなか『風花がまだ好きだ。風花ともう1回やり直したい』そう切り出せずにいる。
メインのイルカショーも見て、そろそろお別れの時間。
「心配だから駅まで送るよ」と申し出る俺に、風花はばっさりと「そこまでしてもらう義理はもうないよ」と断ってきた。
もう無理なのか?
風花はもう俺を見ていない。
だけど、最後に俺の気持ちを伝えようとした時、風花が口を開いた。
「じゃあ、陽向元気で。高校教師の夢、絶対叶えてね。次の彼女は大事にしてあげてね、なんて余計なおせっかいか。今までありがとう、バイバイ」
それは、今まで見た風花の笑顔の中で一番綺麗な笑みだった。
引き止めようとした俺を見向きもせずに、風花は踵を返し去って行く。こちらを一度も振り返らずに。
”次の彼女は大事にしてあげてね”なんてそんな言葉、風花から聞きたくなかった。
俺はまだ風花が好きだよ。風花だけが好きだよ。
言えなかった言葉を噛みしめる。ポケットに入れた、結局渡せなかった風花への誕生日プレゼントのブレスレットをポケット越しに握り締めながら。
呆然と立ち尽くす俺は、込み上げる涙を堪えきれなかった。
そんな俺をあざ笑うかのように、または同情するかのように、空も泣き始めた。
雨の日はサッカーが出来ないから嫌いだった。
風花も雨だと俺が練習している姿を見る事が出来ないから嫌いだと言っていたな。
失って尚更気付く。風花の存在の大きさを。
いつだって好意を伝える事をいとわずに、真っ直ぐに俺にぶつかってきてくれた風花。
大好きだった。大好きだよ。
涙がこぼれ落ちる度に、後悔が1つ生まれる。
風花が去って行った道を見つめながら、俺はその場にしゃがみ込んだ。