キミへの気持ちが消える前に
「あ、華あれだよ!屋台見える!」

「結、今行くから!」

若干歩くのが早かった結と航大が手を振ってくる。

確かにここからでも少し屋台が見えている。

「ほら、華そこ危ないよ。ちゃんと見て。段差ある」

手を取られる。

一瞬理解が追い付かない。

私の右手は実弘に握られている。

「あ、ごめん。ありがと」

焦ってその手を振りほどいてしまう。

違う。

実弘のことが嫌いなわけじゃない。

実弘のことは好きなのに。

嬉しかったのに。

「ごめんな。俺、咄嗟に手掴んじゃって」

弁明したいのにうまく言葉が出てこない。

「航大たち待たせてごめんなー!」

さっきのことを気にしないように振る舞う実弘の姿が余計に辛かった。


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