大嫌いの先にあるもの【番外編】
クリスマスの夜、Blue&Devilでのクリスマスパーティーを早めに切り上げ、春音と部屋に戻って来た。

スーツの上着を脱ぎ、ネクタイを解いたベスト姿でソファに腰を下ろすと、春音が水をくれた。

今夜は少しシャンパンを飲み過ぎた。

「黒須、本当に一晩でDVD3本も見るの?」
隣に座った春音がテーブルの上の3枚のDVDを手に取る。

「無理だと思うな。きっと黒須寝ちゃうよ」
「春音と違って僕は途中で寝たりなんかしないぞ」
「まだ、この間の事言うの?」
「見始めて30分も経たない内に春音からいびきが聞こえてきたっけな」
「私、いびきかいてたの?起こしてよ」
春音が恥ずかしそうに足をバタバタさせる。
幼い仕草が可愛い。年下の恋人につい目尻が下がってしまう。

「くーくーって可愛いいびきだったな」
「黒須の意地悪」
「さあ、滝本さんセレクションを見よう。厳選に厳選を重ねた三作だぞ」
「私、絶対に今夜は寝ないからね。最後までちゃんと観てるからね」
「賭けでもするか?」
「ご褒美は?」
「相手の言う事を何でも聞くのは?」
「いいね。のったー!」
春音が満面の笑みを浮かべた。
勝つ気満々みたいだが、今夜もきっと春音は寝てしまうに違いない。
僕以上にシャンパンを飲んでいたし。春音は酒に弱いからな。

この勝負、もらった。
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