大嫌いの先にあるもの【番外編】
「パパ、ピアノ弾こう」
泣き止むと、膝の上の女の子が強請るように身体を上下に揺らし始める。

「ねえ、ももちゃんとピアノ弾こう」
ももちゃん……。

「春音じゃないのか?」
女の子がきょとんとする。

「春音はママでしょ。何言ってんのパパ」

ママ……。

そういう事か。この子は春音と僕の娘って事か。
頬が緩む。

僕たちにこんなに可愛い娘がいるのか。
くぅー、僕はパパになったのか。

思わず強くももちゃんを抱きしめる。

「パパ、苦しい。あっ、おひげじょりじょりいたい」
愛しさのあまり、ももちゃんのふわふわな頬にスリスリしたら怒られた。

「ごめん、ごめん。ももちゃんが可愛くてつい」
「おひげがない時にしてって、いつも言ってるでしょ」
眉をハの字にした不機嫌そうな顔にもキュンとしてしまう。

信じられないぐらい可愛い。
心の底から愛しさがこみ上げて来て、なんか……。

「パパ、泣いてるの?どっか痛いの?いたいの、いたいのとんでけーする?」
ももちゃんが心配そうな顔をする。

「痛くないよ。ももちゃんに会えたのが嬉しくて、パパつい」
目の奥が熱い。
幸せすぎて泣けてくる。

僕に娘がいるなんて……。

なんて幸せな事なんだろう。
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