大嫌いの先にあるもの【番外編】
「ももちゃん、相沢のおじさんはももちゃんが大人になる頃にはおじいさんになっているよ。おじいさんになった相沢はカッコよくないぞ」
「相沢のおじさんはかっこいいもん!」
ももちゃんの大きな目が怒ったように吊り上がった。

「ももちゃんは絶対に相沢のおじさんと結婚するもん!」
頬を膨らませて怒った顔も可愛い。
あまりの可愛さに笑ってしまう。

クスクス笑っているとももちゃんも笑い出した。
ももちゃんの無邪気な笑い声と僕の笑い声が重なって、胸が温かくなる。ももちゃんの笑顔は春の陽だまりみたいだ。

ももちゃんが大人になっても、僕たちはこんな風に笑っているのかな。

「ありがとう。ももちゃん」
頭を撫でるとももちゃんがどうしたのって感じで、首を傾げた。
きょとんと不思議そうにする表情が愛くるしい。自然と目尻が下がってしまう。ももちゃんにおねだりをされたら何でも言う事を聞いてしまいそうだ。
僕は甘いパパになるな。

「パパ、ももちゃんに会えて幸せで胸がポカポカするよ」
「良かった。パパもう泣かないでね」
「うん。泣かないよ」
ももちゃんが安心したように微笑んで、僕の膝から降りた。

「そろそろ行かないと」
「どこに行くの?パパも一緒に行こうか?」
「パパはダメ。ももちゃん、一人で行かないと」
ももちゃんの言葉に不安になる。
なぜかもう二度と会えないような気がした。

「パパはダメなの?」
「うん。ダメだよ」
ももちゃんがトコトコと歩き出した。
小さくなる背中に胸が締め付けられた。

「ももちゃん、待って」
ももちゃんを追いかけた。
小さな肩に触れようとした時、ももちゃんの肩が透けて掴めなかった。
びっくりして、手のひらを見つめていると、ももちゃんがこっちを振り向いた。

「パパ、バイバイ。また会おうね」
微笑んだももちゃんが光に包まれた。
次の瞬間、ももちゃんは消えた。
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