大嫌いの先にあるもの【番外編】
「ねえ、黒須」
体を重ねた後、ベッドでぼんやりと、ももちゃんの事を考えていると、春音が甘えるように僕にすり寄って来た。

「何だい?」
「もしもの話なんだけど」と、前置きをする春音は照れくさそうな表情を浮かべた。

「あのさ、私たちもいつか子どもを持つかもしれないでしょ。そしたらさ、娘の名前は『もも』がいいと思って」

「えっ」

もも……。

「春音どうしてその名前を?」
「さっきふと思い浮かんだの。可愛い名前でしょ?」

――パパ、バイバイ。また会おうね

夢で会ったももちゃんの言葉が頭の中で再生された。
もしかして、あれは予知夢だったのか?

「黒須、なんで何も言ってくれないの?ダメだった?」
「いや、そうじゃない。びっくりして。僕も娘に『もも』って付けたいと思っていたから」
「本当に?」
春音が大きな瞳を見開いた。

「うん。春音と僕の心は通じているって事だね」
「二人で同じ名前を浮かべるなんて凄い偶然。こんな事あるんだ」
春音が不思議そうに瞬きを繰り返す。

「僕たちの娘は絶対に『もも』だね」
「だね」
「よし、そうと決まれば、子作りだ」
「えっ」
春音の目が泳ぐ。

「冗談だよ。春音がそういう気持ちになったらしよう」
「うん」
頷いた春音にキスをした。

いつか、また会おう。ももちゃん。

終わり
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