大嫌いの先にあるもの【番外編】
「春音ちゃん、眠くなっちゃった?」

穏やかな声と、クスクス笑う声がした。
目を開けると、焦げ茶色のテーブルが見えた。

「うん?」

顔を上げて、左側を見れば黒須がいた。
ここは――Blue&Devilのカウンター席だ。

「美香はもうすぐ来るよ。今、楽屋で挨拶をしている所らしいから」

黒須が今使っているのとは違うスマホを見た。なんか形が古い感じがする。

「美香ちゃん、来るの?……」
「春音ちゃん、寝ぼけてる?」

可笑しそうに黒須が笑った。今日はグレーのスーツだったのに紺色の縦縞のスーツになっている。

「もう夜の10時だし、中学生には眠くなる時間か」

黒須が金色のゴテゴテとした腕時計を見た。昔、よく付けていたロレックスだ。ウン百万円もするやつだって聞いた事がある。

うん、ちょっと待って。中学生?
今、私の事そう言った?
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