大嫌いの先にあるもの【番外編】
美香ちゃんの胸に抱き着いて鼻いっぱいに甘い香りを吸い込んだ。
ああ、美香ちゃんだ。
美香ちゃんの匂いだ。
「春音、そんなに甘えん坊だったっけ?」
顔を上げると、クスッと笑いながら、美香ちゃんが右手で私の頬を摘む。よく美香ちゃんがしてくれた動作だった。
私を見つめる柔らかな眼差しも、優しい声も知ってる美香ちゃんと変わらない。
ありえない事だって頭ではわかってる。でも、目の前の美香ちゃんを拒めない。
「だって、美香ちゃんに久しぶりに会ったから」
「帰国してからこの一週間は毎日一緒にいるじゃない。おかしな事を言うのね」
「明日、僕たちがニューヨークに帰るから春音ちゃんは美香に甘えたいんだよ」
そばに立つ黒須が言った。
「美香ちゃん、明日ニューヨークに帰っちゃうの?」
「そうよ。どうしたの?初めて聞いたみたいな顔して」
「美香ちゃん、帰らないで」
「えっ」
「日本にいてよ」
「春音……」
美香ちゃんが困ったように瞳を細めた。
「また帰ってくるから。春音の高校受験が終わった頃にはね。そしたらお花見しよう」
「高校受験……」
あっ。
美香ちゃんが強盗に殺されたのは中学三年の12月だった。
まさか、今私がいる世界は過去?これから美香ちゃんは強盗事件に遭遇するの?
そんな事ありえない。過去の世界にいるなんてそんな訳ない。
ああ、美香ちゃんだ。
美香ちゃんの匂いだ。
「春音、そんなに甘えん坊だったっけ?」
顔を上げると、クスッと笑いながら、美香ちゃんが右手で私の頬を摘む。よく美香ちゃんがしてくれた動作だった。
私を見つめる柔らかな眼差しも、優しい声も知ってる美香ちゃんと変わらない。
ありえない事だって頭ではわかってる。でも、目の前の美香ちゃんを拒めない。
「だって、美香ちゃんに久しぶりに会ったから」
「帰国してからこの一週間は毎日一緒にいるじゃない。おかしな事を言うのね」
「明日、僕たちがニューヨークに帰るから春音ちゃんは美香に甘えたいんだよ」
そばに立つ黒須が言った。
「美香ちゃん、明日ニューヨークに帰っちゃうの?」
「そうよ。どうしたの?初めて聞いたみたいな顔して」
「美香ちゃん、帰らないで」
「えっ」
「日本にいてよ」
「春音……」
美香ちゃんが困ったように瞳を細めた。
「また帰ってくるから。春音の高校受験が終わった頃にはね。そしたらお花見しよう」
「高校受験……」
あっ。
美香ちゃんが強盗に殺されたのは中学三年の12月だった。
まさか、今私がいる世界は過去?これから美香ちゃんは強盗事件に遭遇するの?
そんな事ありえない。過去の世界にいるなんてそんな訳ない。