恋と、嘘と、憂鬱と。

そして、そんな迫力に物怖じしてしまう私。


…美形が怒ると怖い…。


「…っちょ、あの…!」


いまだに、彼の正体がつかめない私は、何か言わなくちゃと、口を開くもなかなか上手く言葉が出てこなくて…。

そのまま少年にグイグイと、腕を引っ張られながら、私はとうとう正門の外まで連れてこられた。

「もう、キビキビ歩いてさっさと行くよ!母さんが夕飯作って待ってるって。今日はちゃんと皿洗いまでしなよね」


少年が苛ついたように言葉を紡ぐ。

そこまで聞いて、私はようやくピンときた。

…え?皿洗い?…夕飯…?

もしかして…。


「…も、もしかして…充希くん?」


ポツリと、思い当たる名前を呼ぶと少年がピタリと立ち止まる。

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