恋と、嘘と、憂鬱と。
そんな申し訳ない気持ちで小さく呟くと、パッと視線を下に向けた。
「…別に責めてるわけじゃないよ。ちょっと意外な反応だったから、びっくりしただけ。とりあえずこの話は終わり。ほら、早く行くよ。母さんが待ってる」
グイッ。
先ほど引っ張られた時より幾分か優しい力で私の腕を掴む充希くん。
心なしか歩調も私に合わせてくれてるように感じた。
…充希くんって、なんだかんだ優しいよね。
口では毒を吐きつつも、行動自体は優しいのだと最近になって気づいた。
「…今日のご飯はなんだろうね…充希くん、和音さんなんか言ってた??」
「さぁね。聞いてないから知らない」
興味なさそうにしつつも、私の問いにちゃんと答えてくれる彼に思わずフフッと笑みがこぼれる。
弟がいたら、こんな感じなのかなぁ。
そんなことを想像しながら、私は充希くんと共に家路を急いだのだった。