恋と、嘘と、憂鬱と。
「…ほんと?」
「当たり前だろ。てか、逆に今更夏休みのルーティーン崩せないって。お前に会わなきゃ夏休みって感じしないしな」
ニコッと優しく微笑み、颯真くんは私の頭をポンポンと撫でる。
…うーん、なんか妹扱いされてる気がする…。
たぶん、颯真くんにとって私は、可愛い妹くらいの立ち位置なんだろうな。
そう思うと、少しだけ残念だけれど、
「…うん!約束ね。ちゃんと手紙も書くから颯ちゃんも、返事ちょうだいよ?…あ、そうだ!中学生になったらお母さんにスマホ買ってもらえないか頼んでみる!もし、買ってもらえたら1番に連絡先教えるからね」
「わかったって。中学でスマホ買ってもらえるといいな」
今はこんな風に、仲良しの関係でいられればそれでいい。
たぶん、私は安心仕切っていた。
来年も、その次の年も、今日の約束を守って颯真くんは島にやってくるって。
「じゃ、季里また来年な!」
次の日、颯真くんは予定通りのフェリーに乗って島を後にする。
「うん!来年ね〜!」
フェリー乗り場まで見送りに来た私は、ブンブンと、大きく手を振りながら叫んだ。
……けれど、その日を最後に、彼が島を訪れることはなかったんだ。