恋と、嘘と、憂鬱と。

賑やかなカフェ店内から一変、キッチン内は静まり返っている。

「……充希くん、大丈夫…?急に黙り込んじゃうから…」

ピクッと、私の言葉に反応を示した充希くんが、伏せていた顔をゆっくりあげた。

……!?

そこには、なんとも言えない不安げな表情を浮かべた充希くんの姿。


いつも冷静で、大人びた彼からは想像もつかない表情に思わず私は目を見開いた。


すると。


「ねぇ、さっきの…久瀬先輩って人……いや、ごめん。やっぱりなんでもない」


私に向かってポツリと問いかけるも、途中で言葉を濁した充希くん。


「…久瀬先輩が、何?」


なんでもないわけない。だって、こんな充希くん私、見たことないもん。


思い返せば、充希くんの様子がおかしいのも久瀬先輩の姿を見てからだし。

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