恋と、嘘と、憂鬱と。
優しい口調で、颯真くんが彼女のことを話すものだからちょっとだけイライラしてしまった僕。
『ふーん、その子、女の子なの?僕はあんまり仲良くなれそうになーい』
だから、ついついそんなことを言ってしまったんだけど…。
『いや、充希はきっと気に入るよ』
なぜか、確信したようにそう言う颯真くんに僕は一瞬言葉に詰まった。
『…そ、そうかな?そんなことないと思うけど…』
『良いやつだよ?絶対お前も好きになると思うけどな』
その日から、時々、颯真くんは島にいるという彼女の話を僕にするようになった。
最初は興味なかったし、むしろ僕以外に仲良しの友達のことなんて聞きたくなかったし話半分に聞いていたんだけど。
『お、充希!聞いてよ。季里がさ〜』
『今度は何しでかしたの?』
颯真くんが話してくれる島での彼女の生活があまりにもキラキラしていて、楽しそうで、僕もいつからか楽しみになっていて。
『来年は、充希も一緒に行こうな!』
『うん…!』
そんな口約束を子供心に本気で考えていた。
けど、結局、中学生になった颯真くんとは、どんどん疎遠になり、その約束は果たされることなく今に至る。