恋と、嘘と、憂鬱と。
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そんな昔の出来事を思い出しながら、僕はチラリとカウンター席から見えるある人物の姿を見つめた。
…やっぱり、颯真くん…だよね?
周りが賑やかな中、端の方で静かにご飯を食べている彼。
先ほど、彼の姿を見た時、思わず身体固まって声が出なくなってしまった。
人間って、本当に驚くと声が出ないんだな…。
そんなことにはじめて気づいて小さくため息をこぼす。
久瀬と、名乗っていた彼。
確かに名字は違うし、若干昔と比べると雰囲気も違うけれど、僕が颯真くんを間違えるはずない。
ただ少し気になるのは、先ほどキッチンで会った時、絶対に僕に気づいたはずなのに颯真くんは、知らないフリをした。
それに…彼女もまた颯真くんに気づいていないような雰囲気だったし…。