恋と、嘘と、憂鬱と。

あんなに楽しそうに、彼女の話を僕にしてくれていた颯真くんが、自分のことを話さないなんて…何か変だ。

まるで、他人のような振る舞いに違和感を覚えた僕。

彼女…季里だって、颯真くんに会うのを楽しみにしていたし…。

キッチンで、何かを期待するように僕に問いかけてきた彼女もおそらく何処かで、何かしら違和感を感じているのだろう。

もしかしたら、薄々颯真くんのこと気づいていて、確信が持てないでいるのかな。

そんな季里の様子を思い出し、ズキンと胸が痛んだ。

颯真くん、なんで僕にも、彼女にもそんな他人行儀な態度をとるの?

キッチンで1人残された時、そんな想いがグルグルと頭を支配していた。


季里に、久瀬っていう人が、颯真くんなんじゃないかと感じたことを言ってしまおうかとも思ったが…。

颯真くんにも何か事情があるのかもしれない…。

それに、僕から彼女に伝えるのは違うような気がする。


そう思い直し、あの時はとっさに誤魔化した。

< 181 / 405 >

この作品をシェア

pagetop