恋と、嘘と、憂鬱と。

急な玲子さんの変化を不思議に感じつつ私は、おもむろに問いかける。

「…颯真には…会えたの?」

小さく呟くように、私に向かって声を発した玲子さん。

…そうだよね、玲子さんが颯真くんのこと気にならないわけないよね。身内だもん。

連絡つかなくなってから、随分心配してたし…。

『季里ちゃん…どうしよう。颯真と全然連絡がつかないの…番号変えちゃったのかしら?兄さんもよくわからないって言うし…あぁ、もう!どうなってんの!?』

颯真くんが島に姿を見せなくなってから、玲子さんが苛立っていた姿を思い出す。

当時の私は「玲子さん、大丈夫だよ。私もいるからね」と、ギュッと玲子さんの手を握るくらいしかできなくて。

たぶん、玲子さんが私に電話をくれた1番の要因は、きっと颯真くんのことを聞きたかったからだと、悟った。

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